22時半に竹芝桟橋を出港して、
久しぶりの船の上からの東京湾の夜景を堪能・・・
と思ったら、背後で
「カンパーー―イ!!!」
と、賑やかな声が。
「初めましてー!よろしくおねがいしまぁーーーーす!!!」
きっとツアーなんだろうね。
30代くらいの男女10人くらいか?
私たちこれからイルカと泳ぎに行くんです楽しいんですー
初めましての人もいるけどもうこんなに仲良しなんですー
というオーラをバンバン醸し出して、缶ビールで乾杯してる。
こういうウェイウェイ系は苦手なので、
仕方なく、船の反対側の甲板に移動。
移動した反対側は、私と似たような、一人でしっぽりしたい人が、
ポツン、ポツンと夜景を堪能してて、静かでよかった。
煌びやかだった夜景もだんだんと落ち着いて来て、
家だったらもうとっくに寝ている時間になったので、
自分のベッドに戻って寝る準備を。
明日、無事に御蔵島に到着できれば、島に着いたらすぐイルカ船に乗るだろう。
ちゃんと寝ておかなくちゃ。
歯を磨いて顔を洗って、シャワーは酔うからいいや。
寝て目が覚めたら御蔵島だ。
なんて思ってても、なかなか寝付けなくて、
やっとウトウト・・・したと思ったら船内放送。
あ、もう朝なんだ。
「まもなく三宅島に到着します。下船のお客様はご準備を。」
おぉ、もう三宅島かー。
甲板に出て島でも見てみようかな・・・
と起き上がったその時。
「なお、御蔵島は港の海の状況が悪く接岸できないと連絡が入っており、
本日は欠航となります。ご了承ください。」
というアナウンスが・・・。
欠航・・・。
こんな切ない報告を、サラッと、いともサラッと言うなんて・・・・。
あぁ・・・ダメだったか・・・。
もう三宅島なんて見たくないわ。
ショック過ぎて動けないわ。
三宅島で降りる人たちの、ザワザワする音を聞きながら、
ベッドの上で固まる私。
しばらくして、船は三宅島を離れた、らしい。
「本船は御蔵島を通過して、終点の八丈島に行きますよ。」
みたいなアナウンスが流れた。
それから3時間くらいして八丈島に到着。
八丈島で降りる人がわらわら降りてった。
つまりこの時点でこの船に残ってる客は、みんな御蔵島に行く予定だった人ってことだ。
私のベッドのエリアは、女の子が一人、残ってた。
どうしよう、話しかけてみようかな。
欠航の悲しみを分ち合ったら少しは気が紛れるか?
でももし、
「私こんなの慣れっこですから。」
などと旅慣れマウンティングをされたら、もう立ち直れない。
迷っていたら私のベッドに船員さんがやってきた。
黒服みたいに立膝ついて、
「御蔵島の予定の方ですね?どうしますか?八丈島で降りられますか?」
と聞いてきた。
一瞬、はい降ります、と答えそうになったのをぐっと堪え、
「いえ、このまま乗ります」と返答。
「では、このままこのベッドをご利用ください。
ただしこの後、船内清掃が入るので一旦ラウンジなどに行かれて、ベッドをお空けください。」
残ってるお客さん一人ひとりに聞いて廻ってるみたい。
そうか。船内清掃か。
ぐちゃーっと広げてた荷物を簡単にまとめて、貴重品だけもって、甲板に出てみた。
モバイル通信がつながるので、旦那に欠航の報告ラインをしたり、
八丈島の写真を撮ったりしながら時間を潰す。
「御蔵島予定のお客様。折り返しのご乗船につきまして、
乗船券を確認するので総合案内までお越しください。」
とのアナウンスが流れたので、受付に行ってみると、数人がパラパラと並んでた。
あー、みんな御蔵島残念チームだね。
受付をしてくれた船員さんに、
「明日の船なら御蔵島に着岸できますかね?」
と聞いてみた。
そう、この船が竹芝に着くのが20時頃。
その2時間半後にまた船は出航するので、
そのまま乗って、またチャレンジしようかな、と思っていた。
すると、
「いや・・・明日の方が厳しいです。」
と。意外な答え。
「えー、明日は晴れるのに?」 と聞くと、
「晴れるんですけど、低気圧が近づいてきているので・・・。」
と、横に張り出されている天気図を指さしながら、
「明日の方が海況は悪いです。しかも、これからどんどん悪くなりますから・・・。」
と申し訳なさそうに教えてくれた。
今日がダメで明日はもっと悪い。
となると、もうダメじゃん・・・。
はぁ~。
諦めるか、それともダメもとでまた船に乗るか。
迷っていたら、一人旅っぽい女のひとがフラフラしていたので、話しかけてみた。
すると、その女性も次の船にまた乗るか迷っているらしい。
私も迷ってる、ということと、
さっきの船員さんの、「明日の方が海況は悪い」っていう話をしてみた。
「どうしましょうね~」
うーん・・・と固まるオンナ二人。
そして彼女からの情報として、
次の船に乗るならこのまま今回の船代で乗ることができる。
つまり、新たに次の船代を払う必要はないということ。
乗らないなら、払い戻してくれるらしい。
そして、この後、八丈島を出たら、
午後にもう一度、御蔵島に着岸できるかアタックするらしい、と。
なんだ。八丈島折り返してからの御蔵島寄港は、
まだ完全欠航と決まったわけじゃないのか。
そんなこと、さっきの船員さんは言ってなかったよ。
御蔵島、上陸できるといいですね、と言ってその女性とは別れ、
また自分のベッドに戻って横になった。
ほどなくして船は八丈島からのお客さんを乗せ、島を離れた。
「当船は八丈島を出港し、竹芝に向かいます。」
とアナウンス。
あー、御蔵島の「み」の字も出なかった。
ってことは、やっぱりダメなのか。
ショックと船酔いの心配で朝ごはんを食べる気にはなれず、
歯磨きと顔を洗ったら、またベッドに横になった。
すると昨晩、眠れなかったせいか、急に睡魔が襲ってきて、
ウトウト、気持ち良く眠ってしまった。
ハッと目が覚めたらもう11時半を回ってた。
昼ご飯、どうする?朝ご飯も食べてないから、食べとかないとなんだけど、
食欲ないしなぁ・・・
なんて思いながらも、しばらくそのままボーッとしていたら、
ピンポーン♪ (実際は違う音楽だったかも)
「長らくのご乗船、お疲れ様でした。
本船はあと15分ほどで、御蔵島港に到着いたします。
御蔵島でお降りのお客様は、下船のご準備をお願いいたします。」
という、定型の女性のアナウンスが。
へ? 降りれんの?!いやいや、この後、船員さんが訂正アナウンスとかするんじゃないの?
やっぱ、ダメだよ~とか言うんじゃないの?
と、ヒヤヒヤしながら待ってみたけど、何もなし。
あれ、もしかして、本当に降りれるのかも・・・。
ヤバイ。
竹芝までまた7時間乗るんだと思っていたから、
荷物を広げたまま!
あと10分?!
ベッドの隅にぐるっと広げられている洗面用具やら着替えやら電気湯たんぽやらオニギリ等々、
えいっ!と慌ててバックパックに詰め込んで、下船口に登ると、
もうすでに何人か並んでた。
なんで? みんな知ってたの?
それとも諦めずに待ってたの?
もしかして、私がウトウト眠っている間に、
なんらかのアナウンスがあったのかも?
数分後、扉の窓の向こうに、港のコンクリートが見えてきた。
御蔵島の景色が、上に下にと、結構、揺れてる。
船、めっちゃ揺れてるし!
やがて景色が水平になってきて、船は港に横づけされたもよう。
島側の人たちがタラップ設置作業を始めて、扉が開けられ・・・
み、御蔵島が、すぐそこに・・・!
ほんと?ほんとにいいの?
急に大きな波がきて、船が煽られて、やっぱりダメってなるかもしれないし、
早く上陸してしまいたい!
はやる気持ちを抑え、
乗船券を船員さんに渡して、タラップを歩いたら船が少し揺れて、
バックパックが重くてふらついた。
タラップ係りの島の人に、
「足元、気を付けてくださいね~」と声をかけられたので、
その人の目をグッと見て、深く頷き、
転ばない様にしっかり踏みしめながら・・・
やったーーー!御蔵島に上陸できたーーー!島は雨。

そんなの気にしない!
上陸できればなんでもいい!
港にズラーっと並ぶ宿のお迎えの車。
でも、自分のお世話になる宿の車がどれか分からない。
プラカードとか持ってる人がいない。
えー、どれ?
雨に濡れながら一台一台、車を見るけど、
宿の名前が書いてある車がない。
書いてあっても、私がお世話になる宿じゃないし。
すると、ひとりのおばちゃんが目にとまった。
なんとなーく、この人かな?と思って話しかけてみたら、大正解!
我ながらすごい。
他の同じ宿のお客さんと一緒に車に乗せてもらって宿へ。
部屋と宿の案内もそこそこに、
「あと30分後にイルカ船が出るので、準備して集合してくださーい♪」
と。
ここから、怒涛のイルカ船準備。
借りるウエットスーツのサイズ合わせてもらったり、
フィン、マスク、シュノーケルをチェックして、
イルカスイムは初めてですか? 御蔵島は初めてですか?等々、
ガイドさんにチェックしてもらって、
イルカスイムは経験あるけど、
シュノーケルどころか、海にもう10年以上、入っていないことを説明した。
朝ご飯も昼ご飯も食べてなくて空腹だけど、
とりあえず酔い止め薬を放り込むように飲んで、
あっと言う間にイルカ船に乗って海の上!
イルカスイム、めっちゃ楽しい!!海が久しぶりで、シュノーケルも久しぶりで、
(この度、シュノーケルとマスクが使えるかお風呂で確認した)
イルカとの泳ぎ方、もう忘れちゃったかもだし、
そもそも47歳の今の私じゃ体力がもたないかもだし、
フィンで足がつっちゃうかもだし、
とにかく、おぼれないよう、死なないように、
皆さんに迷惑かけないように、
イルカに会えるだけでいい!
そう思っていた10年ぶりのイルカスイム!
船の上からイルカを見たら泣いちゃうかも!
と思っていたけど、いざイルカを目の当たりにしたら、
そんなセンチメンタルな気持ちはどこへやら!
いたーーーー!
イルカの背びれがたくさん!!
ぶはっっ っていうイルカの息継ぎの音!!!
早くイルカと泳ぎたいーー!!!!
船の上で、私がウエイトを着けようとしたら、
ガイドさんからストップがかかった。
「海、久しぶりとのことなので、とりあえずウエイト無しで入って見ましょう♪」
と。
それもそうだな、とウエイト着けないで入ってみた。
すごい、ご機嫌に遊んでくれるイルカたちだった!
潜らなくても上まで来て遊んでくれるイルカたち!

一緒のイルカ船に乗った子が撮った写真。
一回目のエントリーが終わった時に、
「大丈夫そうですね♪」
とガイドさんが言ってくれたので、
二回目からはウエイトを着けてエントリー。
向こうからイルカが泳いできた!
えいっ とジャックナイフ (頭から垂直に水中に潜ること)でイルカのもとへ!
今、私、イルカと泳いでる~!
くるくる遊んでくれてる~!
イルカかわいい! めちゃくちゃ楽し~~!
イルカスイム、体が覚えてた。
これには自分でも驚いた!
私とイルカのツーショット♪

同じ子が撮ってくれた。
くるくる回って泳いでる所を、撮ってくれてたんだって。
イルカスイムやる人はみんな、
イルカと自分がくるくる泳いでるところを画像に残したいって思ってるもの。
お願いしてないのに、まだ話したこともない人なのに、
写真とか動画を撮って、どうぞってシェアしてくれる、
なんていい人なんだー!
それにしても、カメラで撮りながら泳げるってすごいなぁ。
私だったらイルカに夢中になって、カメラを落としちゃいそうだわ。
こうして私の久しぶりのイルカスイムは大満足に終わった。
その後は宿でお風呂!
イルカ船に乗るのは同じ宿のお客さんなので、
湯船につかりながら今日の話をして、冷えた体を温めた。
相部屋になったのは、神奈川から来たEさんと東京から来たKちゃん。
さっきのイルカの写真を撮ってくれたのが、Kちゃん。
この二人がまたとても面白い人で。
さっそく部屋で女子?トークしたり、買い出しに出掛けたり。
そして待ちに待った夕食。
私にとっては、竹芝桟橋で食べたオニギリとサンドイッチ以来の、
実に24時間ぶりの食事!
EさんとKちゃんと3人でビールで乾杯!
なんてシアワセな1日なんだーーー。
つづく。。。